浄水器の「ろ材」の比較・浄水器は水を浄化するために「ろ材」を使いますが、1種類ですべての有害物質を除去できる「ろ材」はありません。ろ材によって除去できる有害物質がそれぞれ異なります。そのため、浄水器は、ろ材を複数組み合わせて、いろいろな有害物質を除去できるようにしています。浄水機能のあるろ材として、活性炭、中空糸膜、イオン交換樹脂、セラミック、逆浸透膜など何種類かあります。逆浸透膜フィルターは、例外的に、ほとんどすべての不純物を除去できますが、逆浸透膜だけですと、詰まったりしやすいので、やはり他のろ材と組み合わせています。
大きさは約0.1マイクロメートル以上(マイクロメートルは1000分の1ミリメートル) 粒子状の物質はろ過膜で濾しとるのが効果的です。
大きさは、1ナノメートル(1ナノメートルは、100万分の1ミリメートル)の数分の1から10ナノメートル程度まであります。 逆浸透膜以外のろ過膜では濾し取ることができないので、吸着、化学反応、イオン交換などの能力を持つろ材を使用します。
もう一つは「ろ過膜層」で、一般細菌や濁り、カビなど水中で、原子状・分子状のものを吸着してろ過する部分です。 この二つの層をくぐり抜けることで、有害物質が除去されていきます。
0.1〜0.5mm大の黒い粒状活性炭の表面に多数の微細な穴が空いています。この穴の大きさは一様ではなく、0.8ナノメートル前後の穴が多いのですが、0.5〜数ナノメートル程度の様々の大きさのあながあります。この穴がいろいろな分子状有機物を吸着します。粒状活性炭は、塩素も除去しますが、吸着するのではなく、触媒反応で殺菌作用のない無害な物質に変換しています。
*銀が有毒であるという人がいますが、それは間違いです。 砂糖でも塩でも、多量に摂取すれば死亡することもありえますが、普通の使い方であれば害はありません。 同じように、銀も飲料水中の基準値の範囲ならば、まったく無害です。 基準値は、100ppb(μg/L)です。この100ppbの水を毎日4L、70年間飲み続けても害にならないとされています。 ちなみに、中世のヨーロッパで、貴族たちが銀の食器を使っていたことには、実用的な理由がありました。 一つは、銀に殺菌作用があることです。もう一つは、銀にはヒ素などの毒物に触れると変色する性質があり、毒殺を未然に防ぐことでした。
活性炭の一種ですが、石油、石炭から作る糸状プラスチックを原料にした糸状活性炭です。穴(微細孔)の大きさがそろっていること、製造条件を変えれば穴の大きさを変えられることなどが特徴です。 特定の大きさの有機物分子を吸着するので、粒状活性炭と組み合わせ、粒状活性炭の除去しにくい有機物分子をこの線維状活性炭で補うと、ほとんどの有機物を除去することができるようになります。直径数十μmの細い糸で、細かい粒状粒状にも、シート状にも、大きなブロック状にも加工できます。
カチオンイオン交換樹脂は、プラスイオンである溶解性鉛を除去します。ポリスチレンとビニルベンゼンを素材とする粒状のプラスチックで、重金属プラスイオンを吸着して、代わりに初めからもらっている無害なプラスイオンを放出します。 イオン交換樹脂には、吸着のしやすさに優先順位があります。優先順位の低いプラスイオンが吸着しているところに優先順位の高いプラスイオンがくると交換が起こります。水道水などに含まれる重金属プラスイオンの中では、鉛が最も優先順位が高いので、鉛除去に使われるのです。代わりに放出するイオンには、プラスイオン水素やプラスイオンナトリウムが用いられます。 アニオンイオン交換樹脂はカチオンイオン交換樹脂のマイナスイオン版です。同様の原理で、アニオンイオン交換樹脂は、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素などのマイナスイオンの除去に使われます。
イオン交換繊維を繊維状にしたもので、特性は同じです。 単位量当りの表面積が大きいので、少容量で除去能力をあげることができます。
歯や骨の主成分である燐酸カルシウムの一種で、特殊な分子構造をしています。科学的に合成してつくる白い粒状のものと、牛の骨を高温で焼いてつくる黒い粒状の骨炭があります。プラスチックではなく、無機物のイオン交換物質です。 溶解性鉛の除去に使われ、鉛プラスイオンを吸着して、代わりにプラスイオンカルシウムを放出します。
ポリエステルなどの糸を、編むのでなく絡めて布状にしたフィルターで、0.1mm程度以上のゴミや粒状物質の塊を除去します。フィルターとしてよりも、ろ材の押さえ布として使われることが多いので、ろ材の一つと数えないメーカーもあります。
天然石やコーラルサンゴ(珊瑚の死骸)など、ミネラルを添加するものです。有害物質の除去ではなく、水をおいしくする目的で使われます。
超マイクロフィルターは、0.1μm程度以上の粒状の物質を通さないろ過膜です。中空糸状のものとセラミックでできているものとがあります。 ・中空糸状の超マイクロフィルターを中空糸膜とよんでおり、これがろ過膜の主流になっています。素材はポリエチレンかポリスルホンで、見た目は太めの白い糸ですが、マカロニのように中が中空になっています。糸の外径は約0.4mm 中空部の内径は約0.2mmです。さらに、肉の部分にもスポンジのように0.1マイクロメーター程度の穴が無数にあいています。水が肉の部分の穴を伝って内部の中空部に流れ込む過程でろ過されていきます。この中空糸膜を何十本、何百本と束ねて使います。分子状の物質は除去できませんが、粒子状の有害物質や細菌を除去します。鉄さびも除去できます。アルミニウムも、水道水中では凝集体や水酸化物などになっているので除去できます。 ・セラミックフィルターは、数十μm程度のアルミナ結晶の粒を固めたもので、粒の隙間で大体0.1μm以上の粒状物質を除去します。中空糸膜と比べ、表面積を大きくできないので詰まりやすいデメリットもありますが、100℃の熱水でも使用できる耐熱性があります。また、薬品にも強く、再生使用できる長所があります。 除去できる物質は、中空糸膜と同じです。
粒状活性炭や繊維状活性炭を圧縮して固めたもので、活性炭の能力をそのまま生かしつつ、活性炭の隙間を小さくしてろ過膜の役目をさせています。 超マイクロフィルターに近い性能のものもありますが、比較的大きな物質しか除去できません。また、超マイクロメーターと比べ表面積を大きくできないのですぐに詰まって流水が細くなるデメリットもあります。
逆浸透膜は、水に含まれた分子状、分子イオン状の物質まで通さず、水分子だけを通します。あらゆる水中不純物をろ過する高性能のフィルターですが、必要なミネラル分も除去されてしまうところが難点です。 浄水器に組み込む場合は、逆浸透膜だけではすぐに詰まってしまうので、粒子状物質などを除去しておく中空糸膜等を 上流側に併用します。また、塩素でRO膜が侵されないよう、活性炭なども上流側に併用します。 普通の水道水の水圧程度では、わずかしか水が通らないので、ポンプで水圧を上げる必要があります。それでも毎分0.1リットルも出ないので、タンクに溜めて、タンクについているコックから溜め水を出して使います。 逆浸透膜を通した水は純粋に近く、有害物質が含まれていないので、健康によさそうに思えますが、慣れないうちは多量に飲むと下痢をする人もいます。水はいろいろなものを溶かし込む力が強く、胃壁や腸壁からミネラル分を吸い取ってしまうことが原因のようです。また、純水の長期飲用が血液に影響して多種の障害が発生するという文献もあり、健康への影響は良くわかっていません。 タンク内で、溜め水に空気中から菌が入り繁殖するおそれもあるので、最近は、菌対策を施したもの、浄水にミネラルを添加するものなど、改良型も出てきています。
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. | 活性炭 | 活性炭+中空糸膜 | 逆浸透膜 |
特 徴 |
炭の細かい穴に臭いなどを吸着させる |
0.4〜0.01ミクロンの穴が側面に空いた糸で束ねたような形でろ過する。 |
中空糸膜より100分の1ほど細かい穴を持つ膜。圧力を加えて除去する。 |
除 去 能 力 |
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残留塩素 |
◎ |
◎ |
◎ |
カビ臭 |
◎ |
◎ |
◎ |
鉄サビ |
△ |
○ |
◎ |
一般細菌 |
◎ |
◎ |
◎ |
ミネラルを残す |
◎ |
◎ |
× |
トリハロメタン |
○ |
○ |
◎ |
目詰まり |
○ |
× |
△ |